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ジタクの備え 2024.10.23
住宅耐震化 倒壊防いで「命」守って 補助金活用し負担軽減
今年1月1日に発生した能登半島地震は、発災から8カ月が経過した。被災地では、古い木造住宅の倒壊が多発し、木造住宅の耐震化が改めて課題として浮き彫りになった。山梨県内でも木造住宅の耐震化が急務となっている一方、耐震改修費用の負担などがネックになり、特に高齢者宅はなかなか進んでいないのが現状だ。
「古い建物は軒並み倒壊し、特に2階が1階を押しつぶしている木造住宅が多かったのが印象的だった。新しい建物は残っており、古い建物ほど倒壊の可能性が高いと実感した」。能登半島地震の発生直後、建物の被害状況を目の当たりにした県建築住宅課の担当者はこう振り返る。
81年5月以前は要診断
能登半島地震の被災地では、倒壊した木造住宅の多くが1981(昭和56)年5月以前に建てられたことが分かっている。特に耐震化率が51・0%(2018年度末)にとどまっていた石川県珠洲市や、45・2%(19年度末)の輪島市などで、家屋の倒壊による被害が相次いだ。
1981年6月以降の新耐震基準は、震度5強程度の地震ではほとんど損傷がなく、震度6強から7程度の地震でも人命に関わる倒壊などが起きないことを目指している。これに対し81年5月以前に建てられた木造住宅は耐震性が低く、大規模地震で大きな損傷を受けることが想定される。
同課によると、「住宅・土地統計調査」を基に推計した2020年度末の山梨県の耐震化率は87・3%で、住宅総数32万7700戸のうち、新耐震基準を満たしていない住宅は約4万1700戸に上る。
同課は「まずは住宅の状況を知ることが大切」とし、耐震診断を受けることを勧める。耐震診断は、地盤や基礎、建物の形や劣化状況、壁の配置や量などを山梨県耐震診断技術者(建築士)が調査・確認するもので、住んでいる市町村に申し込み、条件に当てはまれば、無料で受けることができる。判定結果に応じて、耐震改修費用の概算見積もりも出してくれる。
安全な空間作る方法も
県では、県民の生命・財産を守るため、市町村と協力し、本年度、木造住宅の耐震改修や建て替え工事への補助制度を拡充。耐震診断で「倒壊の可能性がある」と判定された場合、耐震改修などの費用として最大125万円の補助が受けられる。また、補助割合もこれまでの8割から10割に増やした。
一方で耐震改修や建て替えとなると費用負担が大きく、工事に踏み切れないケースも少なくない。同課は「建物の一部に安全な空間を作ることで生存の確立は高くなる」とし、耐震シェルターや防災ベッドを設置する方法を提案する。
耐震シェルターは、寝室や居間など住宅の一部に箱型の空間を作ることで、家屋全体が倒壊してもその空間は守られる仕組みで、家屋全体の改修工事や建て替えに比べて安価ですむのがメリットだ。一方、防災ベッドは寝床の上を頑丈なフレームで覆うことで安全な空間を確保して命を守るというもの。県は市町村と協力し、耐震シェルターや防災ベッドの設置費用として、最大36万円を補助している。
県は「木造住宅の耐震化は『知る』ことから始まる。まずは耐震診断をし、補助などを活用しながら対策を講じてほしい」と呼び掛けている。