• 住みやすさ調査隊 2023.09.07

山梨県身延町の住みやすさ調査隊(移住情報)

山梨県の南部に位置する身延町は、中央を流れる富士川を挟んで東西に美しい山々が連なる風光明媚な町です。
日蓮宗総本山として知られる身延山久遠寺や千円札のデザインにも使用されている富士山の撮影地・本栖湖、信玄公が愛したとされる下部温泉郷、人気を集めるアニメ「ゆるキャン△」の舞台など魅力あるスポットが多く、歴史と自然、文化が融合した町には県内外から多くの観光客が訪れています。

電車では新宿から身延駅まで約2時間40分、車では約2時間30分かかります。
身延町は子育て支援や雇用の創出、移住・定住支援などに力を入れていて、移住や二拠点居住を検討する方が増えています。
みのぶ移住パンフレット「みのぶLIFE/MEETみのぶ」では、移住に関する情報を掲載しています。

身延町はどんなところが住みやすいのでしょうか?
住民や町役場に取材し、身延町の住み心地などを調査しました。


目次


◎身延町の住みやすさは?

「身延町に住むようになって、空を見上げることが多くなりました。空が広くて、夜は満天の星。四季折々の自然の美しさにすっかり魅了されています」。昨年4月に横浜から移住してきたYさん(51)はこう話します。

移住のきっかけは、「ゆるキャン△」だったといいます。「ゆるキャン△」は、女子高生がキャンプを楽しむ人気アニメ。身延町はその舞台の一つとなり、アニメの中で登場する場所は〝聖地〟として、多くのファンが訪れています。

中学2年生の息子さん(13)とともに、親子で「ゆるキャン△」ファンだというYさん。「身延町に住みたい」という息子さんの一言で、憧れの町だった身延町に移住することを決めました。

町内には道の駅しもべのオートキャンプ場やみのぶ自然の里、本栖湖いこいの森キャンプ場などキャンプを楽しめる場所がたくさんあり、春・夏・秋・冬、大自然の中でキャンプを満喫できます。Yさん親子も、休日にはキャンプを楽しむことも多いそうで、「先日、息子が初めてソロキャンプをしました。身延町でやりたかった夢が一つ叶って本人は大満足のようでした」と話しています。

地域おこし協力隊として移住コーディネーターの仕事をしているYさん。町の魅力を発信するとともに移住希望者のサポートを行っています。

住まいは、知人に紹介してもらった空き家を借りています。スーパーやドラッグストア、ホームセンターが近くにある地域なので、食料品や日用品はある程度そろえることができるそうですが、「町内はお店が限られているため、町外に出ないと買えないものもあります」とYさん。電車やバスはありますが、本数が少ないため、買い物などの外出には車は必需品だそうです。Yさんは「満員電車に乗らなくていいし、車の中で好きな音楽をかけながら歌うこともできるので、貴重な一人の時間としてドライブを楽しんでいます」と話します。

住み始めて困ったことは、ごみの出し方だったそうです。前の住まいで「燃えるごみ」として捨てていた物の中には、身延町では「資源物」として分別する物もあり、慣れるまでは仕分けに苦労したとか。「町指定のごみ袋に名前を記入するのもびっくりしました」(Yさん)など、ごみ出しの決まり事に戸惑ったこともあったそうですが、「今では意識が高まり、分別もばっちりです」といいます。

 

地域での行事にも参加しています。Yさんが住んでいる地域では、「道づくり」という名前で呼ばれている清掃活動や草刈りなどの作業があり、Yさんは「やり方が分からなくても、地域の人が親切に教えてくれたり、草刈りの道具なども貸してくれたりします」と話しています。

「身延町に住んでいて分からないことは、ネットで検索するよりも地域の人に聞いた方が有益な情報を得ることができる」というのが〝身延町あるある〟だそうで、Yさんは、「地域の人に気にかけていただいて、分からないことを一聞けば三は返ってくるくらい丁寧に教えてくれます」と笑います。

ご近所さんとの〝つかず離れず〟の関係が築けているということで、「息子のことも見守ってくださっていて…。そうそう、息子は近所に仲の良いおじいちゃんがいるみたいで、時々立ち話をしているみたいです」と喜んでいます。


◎身延町はどんなところ?

身延町の人口は1万146人(令和5年9月1日現在)で、面積は301.98平方キロメートルです。少子高齢化が進み高齢化率は49・14%です。

日本三大急流の富士川の東側をJR身延線、中部横断自動車道が南北に通っており、町内に北から中富IC・下部温泉早川IC・身延山ICがあります。また、西側を国道52号が南北に通っており、国道300号が東西に延びています。

町の北部に位置する中富地区は、特産品の西嶋和紙が作られている場所。西嶋和紙は450年の歴史を持ち、武田信玄公に重用されてきました。歴史と伝統を守りながら技術や素材の改良を加え、多くの書家に珍重・愛用されています。「身延町なかとみ和紙の里」では、手すき和紙の体験や全国の和紙の展示・販売などをしています。また、冬季に約40軒の民家が約500㍍にわたって約10万個以上のLEDを飾り付ける「西嶋イルミネーション」が行われ、町の活性化に取り組んでいます。

町の東部に位置する下部地区にある下部温泉郷は、自然豊かな温泉で戦国時代から湯治場として親しまれてきました。日帰り温泉「しもべの湯」には、泉温49.4℃のアルカリ性単純硫黄温泉「しもべ奥の湯高温源泉」と、泉温20.9℃のアルカリ性単純硫黄冷鉱泉「雨河内温泉」という、泉質の異なる2種類の源泉が使用されています。フィットネスやサウナも楽しめます。「甲斐黄金村・湯之奥金山博物館」は、子供も大人も問わず砂金採りに熱中する人続出の〝激アツ〟スポット。初夏にはホタルが乱舞する川辺の散策や、富士五湖の一つである本栖湖でのカヌーやSUPなどのアクティビティも人気です。

日蓮宗総本山・身延山久遠寺がある身延地区は、多くの参拝者や観光客が訪れる観光スポットです。三門と本堂を結ぶ287段の菩提梯や春には樹齢400年のしだれ桜が咲き誇り、節分の季節には力士やタレントらが豆まきをする節分会に大勢の観光客が訪れます。またロープウェイもあり、展望台から見る景色は格別です。商店街には飲食店や土産物店が並びます。宿坊(泊まることのできるお寺)もあり、宿泊だけでなくワーキングスペースとして活用する人も増えています。


◎身延町の買い物スポットは?

町内には、スーパーマーケットの2店舗とドラッグストアが2店舗、ホームセンターが1店舗、コンビニエンスストアが4店舗あります。地元の農家が育てた新鮮な野菜や特産品のあけぼの大豆やゆばなどが購入できる道の駅や農産物直売所などもありますが、個人の商店はそれほど多くはありません。

中富エリアはスーパーとドラッグストア、ホームセンター、スイーツの「シャトレーゼ」がそれぞれ隣接していて、一カ所でさまざまな買い物ができるのが魅力です。

買い物は自動車があった方が便利です。町内にないものは甲府市方面や静岡方面など町外に買い物に行きます。自動車を運転しない人やお年寄りは、自宅と指定エリア内の目的地を行ける「みのぶ乗合タクシー」や町営バスを利用する人もいます。


◎身延町の公共施設や病院は?

身延町は面積が広いため、住民の利便性を考慮し、役場や図書館等の公共施設が中富・身延・下部のエリアにあります。

病院は4か所。このうち総合病院は中富エリアの飯富病院、下部エリアのしもべ病院、身延エリアの身延山病院の3カ所です。診療所は5カ所ありますが、町外まで受診に行くケースも少なくありません。

教育関連の施設は、公立保育所4園(1園は休園)、民間保育所2園、小学校3校、中学校1校、高校2校、大学1校があります。

保育園・学童保育ともに待機児童はいません。

小・中学校に近い子どもたちは徒歩で通学しますが、通学区域が広いため、多くの子どもたちはスクールバスを利用しています。スクールバスはエリアごとにコースが分かれていて、通学時間は小学校で最大30分、中学校で最大40分程度です。


◎身延町の子育て支援は?

身延町の子育て支援は全国トップレベルで、産前から高校生まで充実した支援を行っています。出産祝金(第1子5万円、第2子7万円、第3子は30万円)をはじめ、保育所入園支度金2万円、入学支度金として小学校4万円、中学校7万円が支給されます。

保育料は無料で、保育園の副食費も無料です。小・中学校の給食費も無料。修学旅行費も全額補助、学童保育の利用料も無料です。医療費も18歳まで全額助成、小・中学校の補助教材費の公費負担もあり、子育てを費用面でもサポートしています。 

教育にも力を入れていて、子どもの成長に合わせたさまざまな教育の場を提供しています。保育園では週に1回、外国人講師による英語教室があるほか、4・5歳児を対象に英語教材を配布しています。小・中学校は、町独自の教職員配置体制を整えています。

移住者の中には、子育て環境の良さに魅かれて移住を決めた方もいます。「子どもたちが外で遊ぶことが多くなり、行動も自発的になってきた」「クラスの人数が少ないため、一人一人丁寧に見てもらえるし、先生方の指導が手厚い」などの声が寄せられていて、豊かな自然の中でのびのびと子育てをしたいという人にはおすすめの町です。


◎身延町の住宅事情は?

身延町の住宅地の価格は7000円台から1万3000円台/平方㍍(令和4年山梨県地価調査より)。

町の分譲地に転入者が住宅を新築した場合は100万円、分譲地以外の身延町内の土地に家を建てた移住者は50万円の祝金をもらえます。さらに子ども1人につき20万円が加算されます。

移住者向けに空き家・土地バンクもあり、支援金も充実しています。空き家バンク制度を利用して中古物件を購入した場合は20万円(子ども1人につき20万円加算)、中古物件を賃貸契約した場合は10万円のお祝金があります。空き家の賃貸金額は4~6万円/月です。

いきなり移住するのはハードルが高いという人は、町内に2カ所ある田舎暮らし体験施設を利用するのも手です。週末だけの二拠点居住や移住先を探しながらの一年間の田舎暮らし体験など、自由に使うことができます。年間24万円で1年間(最長2年間)利用できます。


◎身延町で働ける場所はどこ?

身延町役場身延支所内に身延町ふるさとハローワークがあり、求人紹介や職業相談に応じています。町内企業は、建設会社や自動車関連部品製造、病院、介護施設、旅館や宿坊などの宿泊施設などがあります。

地域おこし協力隊として移住コーディネーターや特産品のあけぼの大豆の振興など、これまでに農業、観光、移住関係で活躍しています。

身延町で開業する場合は、身延町創業支援等事業費補助金を交付しています。道の駅しもべは、Wi-Fi環境が整備され、会議スペースも備えるコワーキングスペースがあります。みのぶ自然の里は農業体験型ワーケーションも可能なコミュニティ施設です。

身延山久遠寺周辺にある宿坊では、Wi-Fi環境やワーキングスペースがあり、テレワークができる施設も多いです。山梨県のサテライトオフィス等お試し体験事業の活用も可能です。


◎身延町に住むメリット、デメリットは?

町には身延山久遠寺や下部温泉など、はるか昔から多くの人に親しまれてきた場所と、「ゆるキャン△」の聖地や豊かな自然を満喫できるキャンプ場などここ数年で盛り上がっている場所があり、新旧二つの良さが融合しているのも魅力です。観光客が多く訪れる土地柄もあり、フレンドリーで温かい人たちが多く、移住者には住み心地の良い環境だと思います。

バスや電車などの公共交通機関は少ないため、自動車は生活必需品です。中部横断自動車道が全線開通したことにより、静岡、長野、東京への距離がぐんと縮んだ印象があります。


◎調査を終えて

取材に訪れたのは初夏。よく晴れた青空に山々の緑が映え、富士川の水面がキラキラしていました。それぞれの地区に個性があり、訪れる人を飽きさせない魅力が満載です。そこに居を構えるとなると静かで穏やかな日常も垣間見えて、それもまた身延町の良さなのではないかと実感しました。

身延町の移住コーディネーターのYさんは、身延町を初めて訪れた時に「山、川、空、人々の包容力と美味しい空気を味わえるここに住みたい」と移住を決めたそうで、移住を検討している人に対し、「情報が多すぎて頭がいっぱいになっていた都会暮らしが一変。今は頭がすっきりしています。移住しようと思うと、いろいろ調べることも多いと思いますが、自分がどうしたいか、直感も大事にしてほしいです」と話していました。

都会にはない田舎の楽しみを見つけたYさんのように、身延町で田舎暮らしの楽しみを見つけてほしいです。

(調査員N、2023年9月1日更新)


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