• 住みやすさ調査隊 2022.11.23

山梨県甲府市の住みやすさ調査隊(移住情報)

山梨県の県庁所在地である甲府市は約500年前、戦国武将武田信玄の父信虎が館を移して以来、山梨の政治・経済の中心として栄えてきた歴史ある街です。
日本遺産の景勝地・御嶽昇仙峡エリアや文豪が愛した湯村温泉郷、ワイナリーなど観光スポットも多くあります。
昇仙峡エリアが水晶の産地であったことから宝飾産業が盛んで「ジュエリーのまち甲府」と言われています。
JR甲府駅から新宿までは中央本線の特急で約1時間半。
市内には7カ所の鉄道駅(甲府市と昭和町にまたがる国母駅を含む)があるなど県内では比較的、公共交通網が整っています。
近年はリモートワークの普及により、若い世代の転入者が増えています


目次


◎甲府市の住みやすさは?

京都生まれのNさん(50代)は8年前、20年間暮らした米国カリフォルニアから甲府市に移住しました。
JR甲府駅から徒歩8分ほどの場所にある築100年ほどの物件に夫と暮らしながら学習塾を営んでいます。

Nさんは車を持っておらず、移動手段は自転車と公共交通機関です。
「おいしい飲食店やYCC県民文化ホール、県立美術館(写真下)などの文化施設が徒歩圏内にあるので、車がなくても不自由ではありません。市民勉強会や生涯学習講座も充実していて、知的好奇心が刺激されるまちです」とNさん。
甲府盆地を囲む美しい山々の風景や水道水がおいしいことも気に入っているそうです。

また、甲府駅北口アシストエンジニアリングよっちゃばれ広場では定期的にマルシェやワインのイベント、祭りなどが開催されており、
「甲府で楽しみたいことが多すぎて、その3割もできていないです」と話します。

一方で、冬の寒さは住んでみなければ分からなかったこと。
移住を考えている人には、「まず二拠点生活から始め、自分の思い描いた甲府生活と異なる点は何かを検証し、それが許容範囲かどうかを考えて決めることが大事です」とアドバイスしています。


◎甲府市はどんなところ?

甲府市の人口は18万6573人(令和4年10月1日現在)、面積は212.47平方㌔㍍です。山梨県のほぼ中央にあり、南北に細長い形をしています。

北部、中心、南部の3つのエリアに分けられ、標高2599㍍の日本百名山の金峰山につながる中山間地の「北部エリア」(写真下)は、昇仙峡や千代田湖など豊かな自然に囲まれ、標高が高い場所は高原のような気候。田舎暮らしをしたい移住者にも人気の地域です。

甲府駅を中心にした「中心エリア」には官公庁や繁華街、マンション、大学などが集まっています。
市街地には武田信玄ゆかりの湯村温泉郷もあります。街中に点在する銭湯等は全て温泉というのも魅力です。
生活に便利なエリアで、車を持たない暮らしも可能です。
甲府駅にはJR中央本線の特急あずさ、かいじが乗り入れ、新宿まで約1時間半で行くことができます。

「南部エリア」は、幹線道路沿いに大型店舗が並びますが、閑静な住宅街が広がるエリアでもあり、ゆったりとした暮らしが送れます。
農地も多く、特に中道地区はトウモロコシ・ナスの栽培が盛んです。
中央自動車道甲府南インターチェンジがあり、都心までは車で約1時間半。
リニア中央新幹線山梨県駅の建設予定地もありますから将来的に重要なエリアとなります。

市内には鉄道の駅が7駅あるほか、バス路線が甲府駅から放射線状に県内各地へ伸びており、比較的、公共交通網は整っています。
しかし、バス、鉄道ともに本数が少ないため、公共交通機関は補助的です。

盆地特有の気候で夏は蒸し暑く、冬は寒さが厳しいです。周りを山に囲まれ森林が多いので、夏でも昼夜の温度差があります。冬は冷え込み、晴れの日が多く、市街地の積雪は少なめです。

年間平均気温は15.8℃。最高気温が35℃を超える猛暑日の日数は東京よりも数日多いですが、0度を下回る日は東京より16日も多いため、冬のほうが気候の違いを感じるかもしれません。


◎甲府市の買い物スポットは?

甲府駅周辺から中心と呼ばれるエリアには、成城石井などが入る甲府駅ビル「セレオ甲府」をはじめ、飲食店や衣料品店の個人商店が並ぶ甲府中心商店街、ヨドバシカメラがあります。
それ以外の地域には、オギノ、いちやま、パークス、ザ・ビッグなどの食品スーパーや、サンロード、サンドラッグ、カワチなどのドラッグストアが点在。
郊外にはMEGAドン・キホーテ甲府店などの複合型大型店舗、ユニクロ、GUといった衣料品店がありますので買い物には困りません。

地元農家が栽培した農産物が安価で買える農産物直売所も人気です。甲府駅周辺で暮らす場合は車がなくても食料や日用品を調達することができますが、郊外の場合は車があったほうが便利です。


◎甲府市の公共施設や病院は?

甲府市役所は甲府駅南口から徒歩6分。旧町村には中道支所、上九一色出張所を構えています。また、各種証明書の交付などを行う窓口センターが市内10カ所に開設されています。

教育関連では、保育園20(公立5、私立15)園、認定こども園33園、許可外保育所30園。地域型保育施設6園、幼稚園10園(国立1、私立9)、小学校は国立1校、市立25校、私立2校。中学校は国立1校、市立11校、私立3校。高校は県立6校、市立1校、私立5校、定時制県立校2校。特別支援学校は市内に6校あり、小、中、高校の特別支援教育を行っています。

総合病院は14施設あり、このほか歯科や診療所を合わせると300以上の医療施設があります。甲府市医師会救急医療センター、小児初期救急医療センターでは夜間救急診療を行っています。

また、県立美術館、県立文学館、県立図書館、県立科学館、市立図書館、YCC県民文化ホールといった大規模な文化施設が多くあり、定期的に企画展やコンサート、講演会、講座などが開かれています。


◎甲府市の子育て支援は?

甲府市では妊娠・出産・育児をさまざまな面で支援しています。「マイ保健師制度」では妊婦一人一人に担当の保健師を配置。妊産婦や子育て中の母親の自宅を訪問して、育児や健康についての相談に応じています。また、産後1年までの母親の自宅に助産師が訪問し、母体ケアや育児サポートを行う訪問型の産後ケア事業「おうちdeホッとママケア」(利用者負担1500円)もあります。予防接種の日程や市内の子育て関連施設などの情報が得られる無料の子育て支援アプリ「すくすくメモリーズ」も好評です。

中学生以下(令和5年1月1日からは18歳以下)の子どもは県内医療機関の通院入院医療費が基本的に窓口無料です。

甲府市の保育園・認定こども園などの待機児童はゼロ。年収640万円未満世帯の第2子以降で3歳児未満は保育料が無料になります。また、1~5歳の幼児が2人以上いる家庭には電動アシスト自転車を一年間、無料で貸し出しています(8台限定)。

市役所内には子ども相談センター「おひさま」があり、家庭児童相談員や保健師らが妊娠、出産のほか、18歳未満の子どもに関する相談に応じています。


◎甲府市の住宅事情は?

甲府市内の住宅地の価格はエリアによって大きな差があり、1万6000~6万円台/平方㍍です。
田舎暮らしをしたい人には土地価格が比較的安く自然が豊かな北部の千代田地区、宮本地区のほか、古き良き里山の風景が広がる南部の中道地区がお勧めです。

甲府市が指定する居住誘導区域内の5年以上居住されていない空き家を購入し5年以上定住する場合は、最大30万円の改修費が助成され、新婚や子育て世帯には最大20万円が加算されます。市営住宅に入居する場合、新婚、子育て世帯は収入や年齢などに応じて最大で36ケ月、計72万円の助成があります。

市が運営する空き家バンクの物件数は少なめですが、市内には不動産業者が200社以上あり、民間の不動産サイトも充実しています。
賃貸物件の数は県内一なので、まずは賃貸で暮らしてから居住エリアを絞るのもいいかもしれません。


◎甲府市で働ける場所はどこ?

甲府市の特徴的な産業は宝飾、ワイン、甲州印伝、農業です。特に宝飾産業は、県内に約800社ある事業所のほとんどが甲府市内に集まっています。

職業分類で多いのは①小売、卸業②製造業③医療福祉。有効求人倍率は1.52倍(令和4年7月)です。毎年、秋に市内の企業約100社を集めた合同企業説明会を開いており、移住前に就職したい人の参加も可能です。

起業、出店したい人への支援が充実しているのも甲府市の特徴です。甲府市役所、山梨中央銀行、甲府商工会議所の3社が合同で運営している合同会社まちづくり甲府が、中心商店街の空き物件の見学会を定期的に開催。改装修理相談、助成制度紹介、融資相談などで開業をサポートしています。甲府市中心市街地空き店舗活用事業補助金などもあり、若い世代の参入が進んでいます(写真下)。

甲府は農業も盛んです。南部の中道地区はトウモロコシとナス、東部はブドウ、北部は稲作とバラエティー豊か。新規就農の相談は甲府市就農支援課で受け付け、農業体験も実施しています。

テレワーク施設は、甲府駅南口のコワーキングスペース「CROSS BE」をはじめ民間の施設が数多く、テレワークスペース付きの賃貸物件もあります。


◎甲府市で遊べる場所はどこ?

小さな子どもがいるファミリーにお勧めなのが、甲府市子ども屋内運動遊び場「おしろらんど」(写真上)、動物園(令和8年まで改装中)を併設した甲府市遊亀公園、県立科学館や大型遊具がある愛宕山こどもの国です。

アクティブ派には、スケートリンクやプール、スタジアムを備えた小瀬スポーツ公園、キャンプ場やトレイルでアウトドアを満喫できる武田の杜、バーベキューや釣りが楽しめる右左口の里、東日本最大級の古墳と大型遊具がある山梨県曽根丘陵公園などが人気です。

また、渓谷美が有名な昇仙峡(写真下)や、緑に囲まれた千代田湖はドライブに最適です。日本百名山の金峰山をはじめ、山梨百名山10山、甲府名山25山が指定されていて、低山から、本格的な登山までハイキング、トレッキングが楽しめます。

甲府駅周辺では、土産品店やカフェなどが軒を連ねる「甲州夢小路」、武田信玄を祭る武田神社、甲斐善光寺など旧所名跡があります。


◎甲府市の近所付き合いは?

市内の各地域には、住民同士のコミュニティー組織「自治会」があります。転勤族や学生が多く暮らす中心部と郊外では自治会のイベントや運営方法などに違いがあります。ごみ捨て場の管理やごみの分別などを自主的に行っている自治会もあります。自治会への入会は任意ですが、近所付き合いを円滑にし、災害時の共助を促進するためにもできるだけ参加した方がいいでしょう。


◎甲府市に住むメリット、デメリットは?

田舎を楽しめる街に暮らしているということ」。移住をサポートする「こうふコンシェルジュ」の担当者は甲府に暮らすメリットについてこう説明します。
便利な都市機能を享受しながら、手を伸ばせば自然に触れることもできる。そんな多彩で豊かな暮らしを実現できるのが甲府市の魅力だそうです。

デメリットの夏の暑さと冬の寒さを乗り切る秘訣(ひけつ)は「車を利用し、ドアトゥドアで移動すること。暑さ寒さをしのぐことにつながります。でも、その暑さ寒さが四季のバリエーション豊かな景色を作り出し、おいしい作物にもつながっていますよね」と話しています。


◎調査を終えて

仕事や住まい、教育、医療など生活に欠かせない要素において、さまざまな選択肢があることが甲府市の暮らしやすさだと感じました。休日に楽しめる場所も多く、特に中心商店街では空き店舗をリノベーションした若手経営者によるお店が増えています。レトロな雰囲気を生かした飲食店やジュエリー、ファッションなどのおしゃれな店舗が並び、甲府の新たな魅力を発信する場所に生まれ変わりました。また、甲府は温泉どころでもあり、湯村温泉郷以外にも市街地に温泉施設や銭湯が点在。すべて天然温泉なので贅沢(ぜいたく)な癒やしの時間を過ごすことができます。

市役所に常駐する「こうふコンシェルジュ」は本年度から2人体制になりました。よりきめ細やかなサポートで移住者を出迎え、オンラインによる相談も随時受け付けていますので、ご興味のある方はぜひ連絡してみてください。

(調査員E、2022年11月23日更新)


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