• 住みやすさ調査隊 2022.11.01

山梨県笛吹市の住みやすさ調査隊(移住情報)

「日本一の桃源郷」を宣言する笛吹市は、桃、ブドウの収穫量が日本一を誇る果樹地帯にあります。
一方で、大型ショッピングセンターが建ち並ぶエリアもあり、都市と自然がバランスよく組み合わされています。
全国屈指の温泉郷・石和温泉郷、春日居温泉郷のほか、ワイナリーや人工雪のスキー場もあり、国内外から旅行客が訪れる観光地でもあります。
中央自動車道やJR中央線特急を利用すれば、新宿から約1時間半とアクセスも良く、移住や二拠点居住のエリアとしても注目されています。

笛吹市の暮らしについて、市役所や住民に取材しました。


目次


◎笛吹市の住みやすさは?

「笛吹市の魅力は子育てのしやすさです。特に小さい子どもを持つお母さんへのサポートが充実しています」。

8年前、結婚を機に県内の他の市町村から笛吹市に転入したYさん(46)は、4歳の長男を育てながら地域子育て支援センターのスタッフとして働いています。
笛吹市を選んだ理由は、山梨県のちょうど真ん中に位置し、県内企業に勤めるご主人が、県内どこの支社に転勤しても通勤しやすい場所だったからだそう。
ただ、この地域に親族や友人はおらず、Yさんは出産後、孤独を感じていました。そんな時に訪れたのが地域子育て支援センターでした。
市内に7カ所設置されており、子育て相談や親子で参加できるイベントなどを実施しています。
「子どもと二人きりになる昼間、時間を共有してくれ、やさしい言葉をかけてくれたスタッフやママ友に救われました」。

2年前からはYさんもセンターで働くようになり、子育て中の母親をサポートしています。
また、忙しい毎日の気分転換や用事があるときに便利なのが、子どもを一時的に預かってもらうファミリーサポートセンター事業だといいます。
「利用料の一部を市が助成してくれ、平日は1時間ワンコイン(500円)で利用できます。美容院や歯医者に行くなど、子どもと離れて自分時間が過ごせるのでリフレッシュできます」。
併せて、未就学児がいる家庭にボランティアスタッフが訪問し、無償で子育てや家事を手伝う「ホームスタート事業(家庭訪問型子育て支援)」も活用し、子育ての負担を軽減したそうです。果樹地帯の笛吹市らしい近所付き合いも気に入っていると言います。
「よく玄関先に、新聞にくるまれた野菜や果物が置いてあります。ブドウや桃の時期には、食べきれないほどいただいて本当にありがたいです。子どもを連れてお礼を言いに行くと喜んでくださり、温かい人が多い土地だと感じます」
とYさん。笑顔が充実した暮らしを物語っていました。


◎笛吹市はどんなところ?

笛吹市の人口は6万7776人(2022年9月末現在)。面積は201.92平方㌔㍍です。主に3つのエリアに分けられ、市の北側に位置する石和町、春日居町の「温泉街エリア」ではJR中央線の石和温泉駅をはじめ大型スーパーや飲食店が並びます。東部の一宮町、御坂町、八代町、境川町は「果樹園エリア」で、桃やブドウなどの果樹栽培が盛んです。最南端の芦川町は、標高600~1000㍍の山間に位置し、小さな集落が点在する「里山エリア」となっています。

笛吹市の生活にとって欠かせないのは自動車で、ないと不便です。バスや電車などの公共交通機関もありますが、運行エリアや時間帯が限られているため、ほとんどの人が買い物や通勤に自動車を利用しています。市内には、中央自動車道の一宮御坂インターチェンジ(IC)と笛吹八代スマートICがあり、新宿までは約1時間20分で行くことができます。またJR石和温泉駅には、中央線特急あずさ・かいじが停車し、新宿まで約1時間半です。

気候は、夏暑く冬寒いという盆地特有の特徴があります。ただ、夏は日中暑いものの、朝夕は比較的涼しくなります。冬は、朝晩を中心に冷え込みますが、雪が降ることは年に数回で、町なかではほとんど積もりません。年間の平均気温は14.3℃です。春には桃の花のピンクと菜の花の黄色が競演する風景がとても美しいです。


◎笛吹市の買い物スポットは?

市内には、MEGAドン・キホーテUNY石和店、イオン石和店といった大型商業施設をはじめ、オギノ、いちやまマート、ザ・ビッグなどのスーパーも多くあります。ホームセンターはDCM、ケーヨーデイツー、コメリ。ドラッグストアもウエルシア、サンドラッグ、ドラッグセイムス、サンロードと豊富です。

さらに地元農家の新鮮な野菜や果物が安価で買える農産物直売所が5カ所あるほか、桔梗屋信玄餅工場アウトレットでは規格外のお菓子が格安で購入できます。食料品、衣料品、薬、生活用品のような日常生活に必要なものは市内で調達でき便利ですが、買い物には車が欠かせません


◎笛吹市の公共施設や病院は?

笛吹市役所が旧石和町にあるほか、御坂、一宮、八代、境川、春日居、芦川の旧町村ごとに総合支所を設けています。

教育関連では、公立保育所11カ所、私立保育園8カ所、認定こども園7カ所、小学校14校、中学校5校、高校1校があります。

病院については、総合病院である「笛吹中央病院」をはじめ、ベッド数20床以上の医療機関は8院あり、石和・春日居温泉郷の温泉を生かした温泉病院やリハビリテーション病院が多いことが特徴です。このほか、内科、小児科、産科、歯科医院など111院があります。

「みさかの湯」「なごみの湯」など市営温泉は5つ。市内在住者は一般より安い市民価格で利用できます。このうち「みさかの湯」には、温泉のお湯を100㍑100円で購入できる温泉スタンドがあり、自宅で気軽に温泉気分が味わえます。無料の足湯は市内に3カ所あります。

文化施設も充実し、山梨県立博物館のほか、市立の美術館や博物館、郷土資料館が4館、図書館が6館あります。


◎笛吹市の子育て支援は?

妊娠中から利用できる「地域子育て支援センター」は市内に7カ所あり、親子で参加できるイベントや講座、子育て相談などを行っています。また、ファミリーサポートセンターでは、子どもを一時的に登録会員(子育てのベテラン)に預かってもらうことができ、利用料1時間800円(休日900円)のうち300円を市が助成しています。

市内には「健康科学大産前産後ケアセンター」があり、産後4カ月までの赤ちゃんとお母さんが一緒に宿泊し、育児の疲れを癒やしながら、助産師らに沐浴(もくよく)や授乳などのアドバイスを受けることができます。センターの利用料金の一部は県と市が助成し、1泊2食付6,100円で3泊まで滞在できます。

子育てに自信が持てなかったり、孤独感を感じたりする未就学児の母親を対象にした「ホームスタート事業(家庭訪問型子育て支援)」は、研修を受けたボランティアが2~3カ月間、週1、2回程度、定期的に家庭を訪問し、母親に寄り添いながら子育てや家事を一緒に行います。

保育園、幼稚園、認定こども園は、3歳から5歳までの利用料が無償化され、現在、待機児童はゼロです。また、5カ所で一時預かりに対応しています。

医療費は0歳から高校3年生(満18歳)まで無料

乳児用チャイルドシートの無料貸し出しも行っています。

子どもの居場所づくりにも力を入れ、小中学生を対象に、土曜日や夏休みなどの長期休暇中、学習支援や体験学習を行っています。


◎笛吹市の住宅事情は?

笛吹市内の住宅地の価格は4000円台~3万9000円台/平方㍍(令和4年山梨県地価調査)。地域によって大きな差があります。また、中学生以下の子どもがいる世帯が住宅を購入する場合、子育て世代住宅取得補助金として、新築住宅の購入に30万円中古住宅の購入に25万円を支給しています。家賃相場はワンルーム、1K、1DKで約3.5万円。2LDK、3K、3DKで約6.5万円です。

市では移住者の受け入れに力を入れ、移住に関するきめ細かなサポートを行う移住コンシェルジュを設置。市役所に常駐しているほか、都内などで移住相談会を開いています。移住の希望者には笛吹市での生活を実際に体験してもらう宿泊施設(1泊2400円)を自然豊かな芦川町に用意しています。
市内には空き家が多くありますが、空き家バンクの登録は少なめです。市ではまず、アパートや公営住宅などでの生活をスタートし、じっくり物件を探すことを勧めています。

また、移住支援金制度もあり、東京圏から移住し5年以上居住するなどの要件を満たす場合、単身60万円、世帯100万円を支給。18歳未満の子どもがいる世帯は1人につき30万円が加算されます。


◎笛吹市で働ける場所はどこ?

仕事探しはハローワークが中心です。笛吹市を管轄するのは「ハローワーク甲府」で、有効求人倍率は1.52倍(令和4年7月現在)です。

笛吹市では特に農業が盛んで、桃やブドウの繁忙期には、農家や共撰所の求人が増加します。畑での農作業は体力仕事ですが、期間限定なので主婦の方も多く働いています。農業を始めてみたいという人が参入しやすいのも笛吹市の特徴です。市内の農家で研修したり、山梨県立農林大学校(北杜市)で専門的に学んだりする方法があります。市役所内にある「笛吹市農業塾」では、新規就農者からの相談に応じていて、各種補助事業の案内や農業用機械の無料貸し出しなどを行っています。

また、石和温泉や春日居温泉では、旅館やホテルのスタッフを随時募集しているほか、ワイナリーの求人があることも笛吹市ならではです。そのほか菓子製造工場の求人などもあります。


◎笛吹市で遊べる場所はどこ?

笛吹市には、子どもが遊べたり、ファミリーで楽しめたりする公園や施設が充実しています。

富士山と河口湖を一望できる「FUJIYAMAツインテラス」をはじめ、サイクリングロードやアスレチック遊具などを備える「山梨県森林公園金川の森」、古墳や大型滑り台がある桜の名所「八代ふるさと公園」、人工雪のスキー場「カムイみさかスキー場」、芝生広場でイベントが開催される「笛吹みんなの広場」などがあります。

桃やブドウ狩りができる観光農園や、果物を使ったスイーツが楽しめる農家経営のカフェが点在するのも笛吹市の魅力です。


◎笛吹市の近所付き合いは?

市内の各地域には「行政区」や「組」と呼ばれる、住民同士のコミュニティー組織(自治会)があります。主な役割は市の広報誌の配布や、ごみ収集所の管理などで、災害発生時には「共助」を担います。参加は任意ですが、市では、移住後の生活を円滑に送るためにも参加を勧めています。


◎笛吹市に住むメリット、デメリットは?

市の移住コンシェルジュによると、メリットは「近所の川で毎年、自然発生したホタルが見られるほど自然が豊かでのんびりできるのに、買い物に困らない。ほどほどに田舎ほどほどに都会なところが暮らしやすい」点です。温泉郷らしく、公共浴場や民間温泉施設が多いので温泉巡りができることも魅力なのだそうです。

デメリットは、「車やバスなど公共交通機関の利便性が低く、車が生活必需品であること」。賃貸物件では駐車場代が別途かかるところもあります。また、運転が困難な年齢になると駅周辺の市街地に暮らしたほうが便利かもしれません。


◎調査を終えて

シャインマスカットや桃はもらうもの。一度も買ったことがありません」。

笛吹市の住人が口をそろえて言う言葉です。「はね出し」といわれる規格外の果物ですが味は市販されているものと比べても遜色なく、何より作り手から直接、受け取れるのが贅沢ですね。そっと玄関先に置いてあるという、ゆるやかな地域のつながりも素敵です。また、市内を流れる笛吹川周辺には野鳥が多く、その風景に魅せられて移住を決めたという方もいて、環境の良さを感じました。大小さまざまなワイナリーもあり、休日、ワイナリー巡りをするのも楽しいのではないでしょうか。

笛吹市では今年から市役所内に移住コンシェルジュを設置しています。笛吹市に暮らし、笛吹市が大好きなコンシェルジュが親身になって相談に乗ってくれ、仕事や居住地など的確なアドバイスをくれますので、移住を考えている方はぜひ問い合わせてみてください。

(調査員E、2022年11月1日更新)


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