• 住みやすさ調査隊 2022.09.21

山梨県北杜市の住みやすさ調査隊(移住情報)

山梨県北杜市は県の北西部、標高400~1400㍍に位置し、年間の平均気温は盆地にある甲府市などに比べて低いエリアです。豊かな自然を生かした米作、高原野菜や果実栽培が盛んに行われています。避暑地としても知られ、移住者や観光客にも人気です。北杜市の住みやすさはどのようなところなのでしょうか?

住民や市役所に取材し、調査しました。


目次


◎北杜市の住みやすさは?

「何といっても自然に恵まれている点が魅力です。観光地として整備もされているので、子どもが遊べる場所がたくさんあります。都心にも車ですぐに行ける環境で、田舎過ぎず、都会過ぎず、子育てするにはいい環境です」

そう語るIさん(34)は今年3月、妻、子ども3人と共に埼玉県から北杜市大泉町に移住してきました。現在、北杜市の地域おこし協力隊として活躍しています。

大泉町は元々、Iさんの母の故郷でなじみのある土地。子どもの頃は、夏休みなどに遊びに来ていたそうです。住まいは静かな農村地域にあり、自分たちのペースを守りながら、ゆったりとした暮らしが送れているといいます。

「日用品の買い物には不自由ありません。ただ、大型のショッピングモールのようなものはないので、洋服や家具などを見て歩きたいときは市外に出ます」というIさん。「移住を考える人は、事前に時間をかけて地域のことを調べることをお勧めします」とアドバイス。「住まいの物件数なども限られています。都会と同じ感覚ですぐ見つかるだろうと考えていると、戸惑うかもしれません」

仕事柄、移住してきた人々から話を聞く機会も多く、「皆さん、地元の人たちが分からないことなどを丁寧に教えてくれ、温かく迎え入れられていると実感しているようです」と語ります。


◎北杜市はどんなところ?

北杜市の人口は4万6113人(2022年7月1日現在)、面積は602.48平方㌔㍍で、県内で最も面積が広い自治体です。日本百名山にも選ばれている八ケ岳や甲斐駒ケ岳、瑞牆(みずがき)山、金峰山などの名峰に囲まれ、南には富士山も望める日本有数の山岳景観を誇ります。

市内は標高400㍍以上の田園ゾーン、800㍍以上の山里ゾーン、1000㍍以上の高原ゾーン、1400㍍以上の山岳ゾーンに分けることができ、人々の暮らしは標高400~1400㍍のエリアで営まれています。

年間の平均気温は12.1度。降水量が少なく晴天率が高いのが特徴で、日照時間は日本一といわれています。夏は湿度が低くからっとして過ごしやすい一方、冬は八ケ岳からの北風が吹き込んで冷え込み、最低気温がマイナス10度以下になることもあります。しかし、降雪量はそれほど多くなく、市内在住者は「標高が高いエリアで時々積もる程度。普段、雪はほとんど気になりません」と話しています。


◎北杜市の買い物スポットは?

通勤や買い物のための自動車は生活必需品。車さえあれば交通の利便性は高いと感じる人が多いようです。というのも、市内には中央自動車道の須玉インターチェンジ(IC)、長坂IC、小淵沢ICと3カ所にICがあり、都心まで2~2時間半で行くことができます。また、JR小淵沢駅には特急あずさが停車します。日帰りでの往復も十分可能です。

市内にはオギノ、ひまわり市場、スーパーおのなどの食品スーパーや、肉のわたなべといった専門店、農産物直売所、道の駅、また、DCMやコメリといったホームセンターもあり、日用品を購入できる店はさまざまあります。米や野菜など、地元の生産者が自信を持って作る新鮮な食材を比較的安価で買うことができます。


◎北杜市の公共施設や病院は?

須玉町に北杜市役所、明野・須玉・高根・長坂・大泉・小淵沢・白州・武川の旧町村ごとに総合支所を構えています。

教育関連では市立保育園10園、市立認定こども園3園(他に私立保育園、地域型保育事業所など)、小学校9校、中学校9校、高等学校4校(市立1、県立1、私立2校)があります。

病院は市立塩川病院、甲陽病院、市立辺見診療所、白州診療所があり、ほかに民間の診療所、歯科医院、助産院があります。


◎北杜市の子育て支援は?

市は子育て支援に力を入れていて、「子育てするなら北杜」を掲げています。

高根町の北杜市保健センター内にネウボラ推進課(子育て世代包括支援センター)を設置。保健師や助産師、栄養士、臨床心理士、家庭児童相談員といった専門スタッフが常駐し、妊娠や子育てに関する悩みにワンストップで対応しています。ちなみに「ネウボラ」は「助言、相談の場」を意味するフィンランド語です。

子育て応援金として出生時に第1子10万円、第2子以降30万円などを支給(2022年度事業。23年度以降は未定)。0歳から高校3年生までの医療費無料、第2子以降の保育料無料制度、すべての市立保育園で調理室を備えた完全給食などを実現しています。


◎北杜市の住宅事情は?

マイホームを取得する際に気になるのが土地の価格です。

北杜市内の住宅地の平均価格は1万1500円/平方㍍。三大都市圏(東京、大阪、名古屋圏)の18万100円/平方㍍、山梨県の2万3700円/平方㍍と比較し、購入しやすい価格といえるでしょう(令和3年山梨県地価調査)。さらに持ち家の延べ面積も東京都の65.90平方㍍に対し、北杜市は123.43平方㍍と倍近い広さになっています(総務省平成30年住宅・土地統計調査)。

北杜市は、総務省が推進する定住自立圏構想の中心市として、隣接する長野県富士見町、原村と共に移住定住促進に力を入れている自治体です。年に1度、3市町村合同で移住相談会を都内で開いているほか、北杜市単独の事業で市営の子育て支援住宅や就業者向け定住促進住宅の貸し出し、空き家バンク事業なども展開しています。

子育て中または子育てを始める世帯(50歳未満)には、子育て世代マイホーム補助金として、新築・建売住宅の購入に最大150万円、中古住宅の購入に最大100万円、増築・リフォームに最大100万円を支給しています。

さらに、移住を検討する人にとっては大いに参考になる「北杜市お試し住宅」も再オープンしました。須玉町にある市営住宅の一室を2泊3日~7泊8日の期間、無料で貸し出しています。ここを拠点に北杜市の暮らしを体験することができ、常時、予約が入っている状況です。市の担当者は「特に冬季に滞在して、寒さを体感してみてください」と勧めています。


◎北杜市で働ける場所はどこ?

北杜市にはサントリーやシャトレーゼ、ミヨシ、ミラプロといった大きな企業があります。その他にも住民は製造業をはじめ、観光業や農業といったさまざまな業種に就いています。
豊かな自然に育まれた地下水や農作物などを活用した日本酒や和菓子、ミネラルウオーターなどを製造する企業も数多いです。

県内外の観光客に人気のレストランやカフェ、雑貨店などが数多く点在しているのも北杜市の特徴の一つで、観光・宿泊業、小売業などの事業所が多く見られます。

企業への就職や起業などのための支援制度も用意されています。東京圏から移住し、市の要件に該当すると、移住支援金として2人以上の世帯に100万円、単身世帯に60万円支給され、18歳未満の子どもがいる場合は30万円が加算されます。

起業する場合は、県からの起業支援金に加え、市から創業促進支援として事業費補助金が支給されるケースがあります。

「新たに農業を始めたい」という人が多いのも北杜市ならでは。山梨県立農林大学校で農業について勉強でき、短期間の農業体験研修や週末農業塾、各種講座なども人気です。50歳未満の新規就農者を対象にした経営開始資金などの支給制度もあります。


◎北杜市のコワーキングスペース、サテライトオフィスは?

コロナ禍によってリモートワークが普及し、それを機に移住してくる人も増えています。
北杜市は「旧道の駅こぶちさわ」2階にサテライトオフィスを整備しました。県外の企業・団体を対象に4室貸し出しています(2022年9月現在では満室)。

コワーキングスペースは、JR長坂駅前に位置する図書館やホールなどを備えた施設「長坂コミュニティ・ステーション」内に整備されています。共有型のオープンスペースで仕事をするスタイルで、他の利用者とのコミュニケーションも図れます。
個室ブース3席や、ソファを置いてくつろいだり、飲食したりできるスペースもあります。北杜市役所長坂総合支所や市商工会などと隣接する地にあるため、就業支援や移住定住に関する情報やサポートが得られやすい環境が整っています。

予約優先で1時間から利用でき(550円)、月額利用は1万1000円です。


◎北杜市で遊べる場所は?

市内にはプールが楽しめるリゾートホテル「リゾナーレ八ヶ岳」をはじめ、県立まきば公園、オオムラサキセンター、名水公園べるがなど、子どもが遊びに行けるレジャー施設が充実しています。特にオオムラサキセンターでは、年間を通してさまざまなイベントを開催しており、子どもたちでにぎわっています。

市内の保育園や図書館の一室には「つどいの広場」を開設しています。未就園乳幼児の親子が気軽に集まり、遊んだり交流したりする場所になっています。

北杜市には飲食関連のチェーン店はほとんどありませんが、おいしい水と新鮮な食材を生かしたレストランやカフェがたくさんあります。観光客ばかりでなく、地元の住民も仕事の後や週末などに、仲間や家族と一緒に訪れています。

また、非常に多く目に留まるのがパン屋さんです。地域おこし協力隊が作製したパンマップを片手に、パン屋さん巡りもするのも楽しみの一つになっています。小淵沢や大泉エリアにはおしゃれで、個性的な雑貨屋さんも数多く点在しています。


◎北杜市に住むメリット、デメリットは?

北杜市に住むメリットとして、市の担当者は「八ケ岳や甲斐駒の風景を堪能しながら生活できることが魅力」と話します。市内は標高差があるため、桜の開花や秋の紅葉も長い期間楽しめます。

「移住者と住民との間の確執を心配する人がいますが、実際多くの住民は若い人が入ってきてうれしいと喜んでいます。移住者が早く地域に溶け込めるように、支援を続けていきます」(市担当者)

デメリットを挙げるとすると、やはり車がないと日常生活が成り立たないところ。デマンドバスや公共バスもありますが、本数は少なめ。若い世代には問題ありませんが、高齢になると不便さを感じるかもしれません。


◎調査を終えて

ダイナミックな山岳風景と高原に吹きわたる清涼な風、夜空にきらめく星々…。

住民が語る北杜市の魅力は、やはり市全域で見られる自然景観です。「住民一人一人に『私だけの眺望スポット』があります。四季折々にさまざまな表情を見せてくれるので、日々感動します」という言葉が印象的でした。

行政は移住定住促進に積極的で、昔からの住民も新規の移住者を歓迎。お互いに歩み寄りながら交流を深めている様子です。市独自の子育て支援も手厚く、若い世代が自然の中でのびのびと子育てするための環境整備を進めていると感じました。

移住者にとって注意点は、自家用車が生活必需品ということ。冬の装備のスタッドレスタイヤも必須です。市の中心街と呼べるエリアが明確になく、「ここに住めば車がなくても大丈夫と言える場所がない」という住民からの指摘もありました。

(調査隊員K、2022年9月16日更新)

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