• 住まいと暮らしのあれこれ NEW 2025.11.14

人にやさしいパッシブソーラーハウス 空気の循環で快適な生活

エネルギー価格の高騰などを背景に近年注目を集めているのが、太陽光の熱など自然環境を活用して空気を温めたり冷やしたりする「パッシブソーラーハウス」というシステムです。
小澤建築工房(甲府市荒川2丁目)の小澤文明社長に、パッシブソーラーハウスの仕組みやメリットを聞きました。

パッシブソーラーハウスの仕組みについて解説してくれた小澤文明社長

太陽の光や熱をエネルギーとして活用する住宅を「ソーラーハウス」と言います。
その中でも、太陽光パネルを設置して、光エネルギーを電気エネルギーに変換し、さまざまな機器を動かす「アクティブソーラー」と、太陽光パネルなどを使わず、太陽の熱エネルギーや光エネルギーを上手に活用して、生活に取り入れる「パッシブソーラー」に分けることができます。

パッシブソーラーハウスは具体的に、太陽光の熱や夜間の放射冷却など自然のエネルギーを利用して快適な室内の温度環境を維持します。
冬場は軒先から取り込んだ空気を、ガルバリウム鋼板(アルミや亜鉛などで構成された合金でメッキした鋼板)の屋根で温め、ダクトを通じて1階に送り、床に取り付けられた吹き出し口を通じて室内全体に行きわたらせます。
冬場はドアや窓を閉め切りにしていることも多く、室内の換気も課題となりますが、パッシブソーラーハウスは空気が常に循環しているので、「暖房しながら換気をしている」と言えます。
洗面所やトイレなど通常は暖房を設けない場所でも温めることができるほか、このシステムを導入した家は布団を太陽に干した後のようなやわらかく、ほんわかとした空気に包まれる感覚があります。

パッシブソーラーハウスの施工事例。屋根に設置したガラスが集熱効果を高める


低コストが魅力

冬場の甲府で、南向きの屋根の場合、温められた空気は60度近くまで上昇し、45~50度くらいの空気を床下に行きわたらせます。
室内温度は23~24度ぐらいを維持するので、家に帰ってきたときに底冷えを感じることはほとんどありません。
空気を送るためにファンを使用しますが、1日のコストは30円程度で、補助的に暖房を使用してもすぐに室内を温めることができ、経済的です。
一方、夏場は放射冷却現象を利用し、取り入れた空気を屋根で冷やし、冷たい風を室内に送ります。
設計では、この効果を生かすために断熱材にもこだわり、熱を逃がさない設計を重視します。
当社では、ドイツ製の木繊維断熱材「STEICO(シュタイコ)を使用します。
一般の断熱材は、部屋と断熱材の間で空気の移動はありませんが、シュタイコは、湿度が高いときには湿気を吸収し、湿度が低い時には湿気を吐き出す調湿機能があります。
木材なので環境にもやさしく、サステナブルな断熱材です。

ダクト(青い部分)を通じて空気が床下に送られる

暖房の効率も上がり、経済的

臭いやアレルギー対策にも有効

パッシブソーラーハウスは常に新鮮な空気が対流しているので、ペットの嫌な臭いが残りづらいほか、アレルギーを持つ家族に対しても効果的です。
また、人が常にいるわけではない別荘にこのシステムを取り入れることで、玄関や窓を締め切りの場合でもカビの繁殖を防ぐこともできます。
新築の家でも常に空気の対流が起こっているので、建築資材の独特な臭いも軽減されます。

近年は、家の見栄えや便利な機能ばかりが注目され、目に見えない空気や断熱に興味がわきづらい状況にあります。
少ないエネルギーで自然と調和するパッシブソーラーハウスを検討してみてはいかがですか。

空気の循環を意識した設計で、パッシブソーラーのメリットを最大限生かす

失敗しないシタク