• ライフスタイル 2023.07.27

環境と産業を守る地域産材・天然素材の家 効果や魅力、注意点とは?

SDGsなど環境意識の世界的な高まりを受け、地元産の木材や天然素材を使った環境に優しい住宅が注目されています。
北杜市を拠点に、八ケ岳産材を活用した家づくりにこだわっている「素朴屋」で広報を務める三浦茂晴さんに、地元産材や天然素材を使った家づくりの意義や魅力、注意点などを聞きました。

木造軸組工法(在来工法)の住宅に使われる木材として知られているのはヒノキやスギ、マツ、輸入材のホワイトウッドやスプルース、複数の木材を結合させた集成材などです。
それぞれに強みがあり、特徴に合わせた適材適所の使われ方をしています。
例えばヒノキは耐久性に優れ、滑らかな手触りで独特の艶と香りがあります。
柱・土台・梁(はり)・床など住宅のあらゆる部分に使用されるほか、建具や家具などにもよく用いられます。
スギは比較的安価で、木目が美しいのが特徴。
古くから、内装の化粧材として多く使用されていて、特に和室の天井材として使われることが多いといいます。


一本一本異なる個性、唯一無二の住まいに|天然素材・地域産材

八ケ岳で採れる木材はアカマツ、カラマツが主です。
強度的に優れていることから、重構造材に多く使われています。
曲がりやすいため、角材にしたり集成材にしたりしないと扱いが難しい樹種ですが、素朴屋ではあえて丸太から側面のみをそぎ落とした「太鼓梁」としても活用しています。

曲がり方を見極めた上での加工など、高い技術が求められますが、マツならではの特徴を生かした「太鼓梁」や「丸太梁」は日本で古くから愛されている使われ方です。
東大寺や法隆寺といった文化財建築の梁にも、意匠的にマツが使われています。
「木は生き物なので、一本一本特徴が違います。
その差によってその家だけの個性が生まれ、愛着が生まれます」と三浦さん。
「施主さまから『ここに使っている木はあの場所に生えていた木なんだ、という説明を来客にするのが楽しい』なんて話を良く聞いていますよ」
と笑顔で説明します。


経年で変わる風合い 家が人と共に成長|天然素材・地域産材

優しい匂いや、経年による変化を楽しめるのも、木ならではの魅力です。
三浦さんは「技術が必要ですが、あえて天井板を張らずに梁など内部の構造を見せる『あらわし仕上げ』にすると、解放感に加えて、木目の美しさや香り、経年変化など木の魅力を存分に味わえると思います。あらわし仕上げを取り入れた家を建てた施主さまからは『大きな木の下で暮らしているような安心感と、リラックス感があります』との声もありました」と話します。

2020年に完成した素朴屋の事務所である「製図場」は、3年の時間経過により既に新築時とは違った味わいが生まれているそう。
あらわし仕上げにした天井の木材や、土壁が深みのある色合いに徐々に変わってきているといいます。
「あくまで変化であって劣化ではないのがポイントです。現存する歴史的な木造建造物が証明していますが、丁寧に管理すれば天然素材の家は100年を超えて暮らし継いでいけます。人と共に家が成長していく様子は、愛着をより深いものにしてくれます」と三浦さん。


水分を吸収・放出 湿度調整に優れる|天然素材・地域産材

また、木は木材に加工された後も、無垢材であれば湿度に合わせて空気中の水分を吸収したり、放出したりする機能があります。さながら天然の加湿器・除湿器として、家の中を自然と快適に保ってくれるといいます。


気密性は「ほどほど」、ロケーションが重要|天然素材・地域産材

気密性は高機能住宅などに比べると低くなりやすいという注意点もあります。
三浦さんは「住宅に対して高気密・高断熱を求める方も多いですが、私たちが提案している住まいは『中気密・高断熱』です。外が猛暑でも家の中はクーラーでキンキンに冷えている、というような暮らしを求める方には向かないかもしれません」と説明します。
「ただ、中気密だからこそのメリットもあります」と三浦さん。
「室内と室外の仕切りが程よく緩いので、室内にいながら周囲の豊かな自然を感じることができます。それによって自然体で暮らすことができ、健康な体作りにもつながると、私たちは考えています。せっかく日本には四季があるのに、家の中に入ったら夏でも冬でも同じ環境というのは不自然ですし、もったいないと思います。天然素材をふんだんに使って家を建てたいという方にはぜひ、ロケーションも含めて考えることをお勧めしたいですね」


森林資源の循環と林業活性化に貢献|天然素材・地域産材

素朴屋は2006年に創業しました。
創業者はもともと林業従事者で「地元産材の魅力を伝え、消費を拡大させたい」との思いから一念発起し、会社を立ち上げたといいます。
三浦さんは「山梨のみならず日本全国で、木はあるけれど利用されていないということが問題になっています。地元産材を使うことは、森を健全に保ち、地域の産業を守ることにもつながります」と話しています。

失敗しないシタク