• ライフスタイル 2022.11.25

自宅に憧れのまきストーブ / 使い方、注意点教えて

炎のゆらぎを眺めながら、パチパチとまきがはぜる音に耳を傾ける―。
「マイホームにまきストーブがあったら」と思い描く人もいるでしょう。
まきストーブの魅力や実際の使い方、注意点などを、まきストーブ専門の会社に聞きました。

写真①

富士吉田市上吉田で40年にわたり、まきストーブの販売や施工をする「暖炉家」。
ショールームにあるストーブに、岡本瞬社長がまきをくべ着火剤に点火すると、ゆっくりと炎が立ち上ります。
着火後、ストーブが200度に達するまで約20分。さらに20分ほどすると、8~10畳の部屋が暖まります。

写真②

岡本社長は「まきストーブは遠赤外線効果により、陽だまりにいるかのようなじんわりした暖かさが魅力です。また、近年の製品は燃焼性能も上がり炎が美しいのも特長。揺らめく炎を眺めることでリラックス効果が得られます」と語ります。


環境にやさしい対策も

同社で取り扱うストーブは輸入品が中心です。欧州の進んだ環境政策に対応した「クリーンバーン燃焼」(自動二次燃焼システム)技術を搭載しています。

クリーンバーン燃焼の仕組みは、ストーブ内でまきを燃やすと、煤(すす)やタールなどの汚れを含んだ煙が出ます(一次燃焼)。
この煙にもう一度空気を送り込み、再度燃やし切ることで(二次燃焼)、きれいな排気が煙突から流れ、環境への負荷が軽減されるといいます。

ストーブのデザインは趣のあるクラシックタイプ(写真③)やモダンでスタイリッシュな部屋にも合う縦型(写真④)などさまざま。
富士北麓地域では、別荘を中心にクラシックタイプに根強い人気があるそうです。
暖房器具としての機能に加え、調理のできるクッキングストーブもあり、シチューやグラタンなどの料理がおいしく出来上がります。

写真③

 

写真④

写真③のまきストーブは、幅793㍉×高さ720㍉×奥行き713㍉のタイプで、約200平方㍍(60坪)までのスペースに対応しています。

「夜中も火をつけたままでいいの?」「朝まで燃やしていて大丈夫?」と心配する人もいますが、まきストーブは安全性に優れた暖房器具です。
夜、寝る前に大きめのまきをくべておくと、厳冬の朝も寒さ知らず。
たとえ火が消えても1~2時間はぬくもりを保ったままなので、暖かい部屋で目覚めることができます。
本体自体が重いので(写真③のタイプで重量は200㌔㌘)、地震のときの耐震性も高いです。
逆に、エアコンや石油ストーブなどのように、即座に火を消すことはできません。
特に外出の予定があるときや就寝前には、事前に燃やすまきを調整しましょう。

さらに、まきストーブではありませんが、まきの代わりに「バイオエタノール」を燃焼させる「バイオエタノール暖炉」(写真⑤)という暖房器具もあります。

写真⑤

燃料はトウモロコシやサトウキビなどを原料としてつくられたバイオエタノールで、燃やしても煙や煤(すす)を排出しない地球環境にも優しい暖炉です。
さらに、電気やガスはもちろん、煙突や換気設備も必要ないので、制約なくどのような場所でも設置することができます。
住宅や屋外のほか、ホテルのロビーやレストラン、美術館といったパブリックスペースへの設置が多く、スペースの雰囲気づくりに一役買っています。


まきの乾燥と煙突が大切

気になる価格は、本体に煙突などの施工費を含め暖炉屋では120万円から。
8~10畳の部屋の場合、まきは夕方から翌朝まで2、3束(約7~8㌔)必要で、ホームセンターなどで購入すると1カ月4~6万円が目安になります。
「原木(丸太)で購入すると約2万円程度に抑えられます。まき割りもいい運動になるとか、きれいに割れると楽しくなるといった声も聞きます。河川敷で伐採した木を無料配布する場合もあり、自治体のホームページなどで確認できます」(岡本社長)。

ストーブにもよりますが、最近の製品では基本的に広葉樹、針葉樹にかかわらず使うことができます。
しかし、燃料となるまきについて最も大切なのは乾燥です。
半年~1年かけて十分乾かすことが必要で、乾燥が不十分だと燃えにくく、不完全燃焼する恐れがあるので注意してください。
「灰の処理が面倒では?」といったイメージもありますが、実際、灰はある程度たまっていた方が、燃え残った熾火(おきび)が長持ちします。
頻繁に捨てる必要はなく、様子を見ながら週に1回程度取り除けば十分です。
処分する灰は家庭菜園や畑などで肥料代わりにも利用できます。

本体同様に大切なのは煙突のメンテナンスで、煙突次第でストーブの性能が左右されるといってもいいほど。
最も怖いのが煙突内部に煤やタールが付着し、そこに火が付く煙突火災です。
煙突火災を避けるために、年に1度の煙突掃除は欠かせません。
その際に出る汚れを見ると、まきの乾燥状況やストーブの使い方が正しかったのかどうかも分かります。上手にまきが燃えていると、汚れはそれほどひどくありません。

写真⑥

注意すべき点は?

憧れのまきストーブですが、主な注意点は以下の通りです。
① 初期費用が高額
② まきの調達や準備、保管場所の確保が必要
③ 暖まるまで30分程度かかる
④ 近所への煙の配慮
⑤ 信頼できる業者を選ぶ

岡本社長は「市街地の場合は煙突の煙が気になると思いますが、上手に燃やすと煙はほとんど出ず、これまでトラブルは聞いたことがありません。一晩中火を付けていても大丈夫なほど安全性も高い暖房器具です。何十年と使い続けることができるのも特長の一つで、住まいのリフォームをするお客さまの中には、『まきストーブだけは今あるものを残して使いたい』と言う方もいます。まきを割ったり、灰を片付けたりといった手間も愛着の一つになると思います」と話しています。


まきストーブで暮らす家族の声「体の芯から温まる」

 

鳴沢村で妻、2人の子どもと暮らすAさん(38)は1年前、住宅を新築する際にまきストーブを設置しました。
知人の家にあったストーブを見て憧れを抱いたのがきっかけでした。
「体の芯から温まる感じは、エアコンなどでは得られません。住宅が吹き抜けになっているので、1台のストーブで2階まで暖まり、半袖で過ごせるほど。室内干しの洗濯物もふんわり乾きます」と満足しています。
幼い子どもたちもまき運びを手伝い、家族で火を囲む生活を楽しんでいる様子。
「富士北麓地域で停電が続いたときも暖が取れ、夜間も炎で明るさを保てました」と、災害への備えにもなっています。

失敗しないシタク