• ライフスタイル 2022.06.13

家庭菜園で野菜作りに挑戦しよう

マイホームを手に入れたら、庭で野菜作りに挑戦したいと考える人も少なくないでしょう。
たとえ小さな花壇の中の家庭菜園やプランターでも、トマトや枝豆、ガーデンレタスといった野菜を栽培することができます。自宅の庭でさまざまな植物と一緒に野菜を育てると楽しく、何より収穫したての野菜は新鮮で安心。味や香りが格別です。
やまなしMU・ハーブガーデンのオーナーで、山梨県立農業大学校で花やハーブの栽培を学んだ輿石睦子さん(甲斐市)に、家庭菜園で手軽にできる野菜作りのポイントを聞きました。


失敗しないコツは土作り 

安心・安全でおいしい野菜を作るには、何より土作りが大切です。植物が健全に育つために、ふかふかの土に改良します。
小さな菜園は土に堆肥や有機肥料、腐葉土を加えるだけで手軽に土作りができます。プランターで栽培する場合は、市販の有機肥料の入った野菜作り用の土を使えば簡単です。

庭や花壇などで栽培する場合は、野菜が育ちやすいふかふかの土にするために腐葉土を加え、肥料として発酵牛ふんや発酵鶏ふんを加えます。市販の有機配合肥料(写真①)を混ぜ込むと効き目が早く、長く持ちます。発酵牛ふんや発酵鶏ふん、有機配合肥料は、ホームセンターなどでコンパクトサイズで販売されています。

写真①

その他に家庭ごみとして毎日出る卵殻を砕いたもの、茶殻、コーヒーかすなども加えて混ぜるといいでしょう。
卵殻や茶殻、コーヒーかすは土を改良するだけでなく、天然の肥料になります。
卵の殻を砕いたり、取っておいた茶殻を土に混ぜたりする作業は、ぜひ子どもと一緒にやってみてください。さらに草取りや収穫作業に参加することで、子どもも早くから野菜作りに興味を持つでしょう。自分で収穫した野菜は一段とおいしく感じられ、家族の会話も弾みます。


収穫しやすい野菜を選ぶ

栽培・収穫しやすい野菜としてはミニトマトや中玉トマト、ラディッシュ、枝豆、結球しないガーデンレタスなどがお薦めです。
枝豆は栽培が簡単な上、子どものおやつやビールのおつまみ、サラダなどにすると、暑い夏の時期の栄養補給になるので大人気です。新鮮なトマトやナス、キュウリは、夏の食卓で活躍する定番の食材です。
図①の栽培カレンダーから、植え付け時季の合う野菜を探してみてください。

図①

今はホームセンターや種苗店などで苗を売っているので、苗を購入して植えるのが最も手軽です。
植えるときは、苗ポットの約2倍の幅、深さの穴を掘り、有機肥料、卵の殻などを一緒に入れて丁寧に土に混ぜます。根がよく伸びるようにふかふかの土になったところで、ポットから苗を出して植え、たっぷりと水やりします。
トマト(写真②)やキュウリ、ナスは苗を支えるための支柱も必要です。

写真②

写真②

一方、ラディッシュ(写真③)や枝豆、ガーデンレタスなどは種から育てます。

写真③
写真③

例えば、ミニトマトの苗を植えたら、その間にガーデンレタスの種をぱらぱらとまき、薄く土をかぶせておきます。3日ほどで芽が出るので、成長してきたら間引きしていきます。間引いたガーデンレタスのベビーリーフはサラダにしたり、スープ、みそ汁に入れたりして食べましょう。
枝豆は深さ2㌢くらいの穴に種2、3粒をまき、土をかぶせます。株と株の間は20~30㌢空けます。


株間と条間

野菜の栽培を説明するときに、よく出てくる言葉に「株間」と「条間」があります(図②)。

 図②

株間は一列に並べて植えたときの植物(株)と隣の株との間の距離です。
また植物を植えた列のことを「条」といい、列と列の間の距離を条間と呼びます。
株間や条間は植える野菜によって異なります。家庭菜園の場合はスペースに限りがあるので、数種類の野菜を少しずつ植えると収穫の楽しみが増えます。条間を気に掛けるケースはあまりないと思います。


水やりは土が乾いたタイミングで

植え付け後はすぐにたっぷりの水やりをします。苗の根が土に活着するまで、毎日水やりをします。
路地植えの野菜の場合、その後は特別に水をやる必要はありませんが、乾燥続きで土が乾いていたらたっぷり水やりします。やり過ぎはかえって根を枯らす原因になります。また、たまに上から葉に水をかけている人を見掛けますが、水やりは植物にではなく、土の方に行うことがポイントです。


適度な脇芽摘み、摘芯が必要

脇芽摘みは野菜の成長を促すために欠かせない作業です。
脇芽は中心の茎(主枝)に生える葉の付け根から分岐して生える芽のこと(図③)。脇芽が伸びると葉に必要な栄養を取られ、花や実に栄養が行き届きません。また、葉が茂り過ぎて風通しや日当たりが悪くなり、病気になりやすくなります。
トマトの場合、脇芽が出てきたらその都度、手で摘み取ることがおいしい実を作るこつ。
キュウリやナスなど他の野菜は、トマトほど厳密にしなくても大丈夫ですが、葉が込み入ってきたら適宜脇芽摘みを行います。混んでいるとダニの発生やうどん粉病などの病気にかかります。

図③

摘芯は植物の一番高い芽を摘む作業のことです(図④)。植物が大きくなり過ぎると、養分が上に行き届きにくくなるので、充実した株にするために摘芯をします。             
ある程度の高さに調整するときは、その時点で付いている花の上数枚の葉を残し、清潔なハサミで主枝を切ります。適度に摘芯を繰り返すことで養分が行き届き、コンパクトで太く丈夫な主軸になります。葉が横に広がり、こんもりした草姿に成長します。

図④


追肥、消毒も忘れずに

長く収穫を楽しむために、野菜には1~2カ月に一度、養分を追加する「追肥」を行います。
発酵牛ふんや発酵鶏ふんなどの有機肥料を株の周囲にまき、草取り用かんなで軽く土に混ぜ込みます。固形や錠剤型の肥料を土の上に置く「置き肥」という方法もあります。

「せっかくの家庭菜園なので、野菜を無農薬で育てたい」と考える人もいるでしょう。しかし、野菜の幼苗は特に病害虫に弱く、初心者にとって無農薬栽培は非常にハードルが高いです。植物由来の殺虫・殺菌剤を購入して使用することをお勧めします。

一方、ニンニクや唐辛子、ネギ、除虫菊やヨモギ、タイムやミントといった野菜や植物の中には、虫よけ効果やうどん粉病などに対して殺菌効果が期待できるものがあります。こうした身近にある野菜やハーブから簡単に自然の殺虫・除菌剤を作ることができます。
作り方は、材料のニンニクと唐辛子に、薬草のヨモギや除虫菊、ハーブのミントやタイムなどを合わせて刻み、鍋に入れてひたひたの水を足します。弱火~中火にかけ、2分の1程度の分量になるまで煮詰めます。冷ましたら、こして保存し、薄めて使用します。
薬草やハーブは全ての材料がそろわなくても大丈夫です。


コンパニオンプランツを楽しもう

苗を植えた後の隙間や丈の高い野菜の株元でハーブを育てると、虫や病気による影響を軽減することができます。こうした植物同士で相性のいい組み合わせをコンパニオンプランツ(共生植物)といいます。

写真④

中でも香りの強いバジルは、トマトのコンパニオンプランツとしてよく知られています。トマトの脇にバジルを植えておけば、害虫を寄せ付けないだけでなく、一緒に料理することができます(写真④)。
同様にタイムやパセリ、和のハーブのシソなども植えておくといいでしょう。
一方で、繁殖力が強いオレガノやミント、レモンバームなどのハーブは路地植えせずに鉢植えにして利用します。鉢を菜園の側に置けば、コンパニオンプランツとしての役割を果たします。


連作を避ける

一つの野菜の収穫を終え、新たに苗を植える場合、同じ種類の作物を同じ場所に植える連作を避けましょう。同一作物を植え続けると、土壌の成分バランスが崩れるだけでなく、微生物に偏りが出て、成長不良や病気になりやすくなります。
小さな家庭菜園で連作を避けることは難しいので、新しく野菜用の培養土を加えて植えます。


輿石 睦子さん

やまなしMU・ハーブガーデンオーナー
JHS上級ハーブインストラクター
管理栄養士

失敗しないシタク