• 間取り研究室 2022.06.15

ライフスタイルに合わせた平屋住宅の間取り

階段がなく、一つのフロアで生活できる平屋住宅。
老後の暮らしを見据えた間取りを取り入れることで、介護の負担が軽減されるなど、さまざまなメリットがあります。
家族構成やライフスタイルに合わせた平屋の間取りを紹介します。


間取りA・高齢の母親の部屋に専用トイレ設置

最初に紹介する間取りAは建坪が約32坪。
40代の施主と10代の長女、70代の母親の3人が暮らす間取りです。
階段を上らずに暮らしが完結することや、将来、介護が必要になったときに家族の負担を軽減できることが平屋のメリットです。
段差がなく、引き戸を多く取り入れています。

母親の部屋は、日当たりと風通しがいい南側に配置。
将来、使用頻度が高くなったり、足腰が弱まったりしても、ベッドから自分の足ですぐに行けるように、部屋の中に専用のトイレがあります。

家族のコミュニケーションスペースとなるLDKは、家の中心に設計。
家族みんなが集まりやすく、互いの存在を感じ合えるように、あえて廊下は設けていません。各部屋のドアを開けるだけでLDKとつながります。
また、畳の間をリビング・ダイニングに隣接させ、どちらにいても対話ができる工夫をしました。
ウッドデッキには洗濯物を干しやすいように深い軒を設けています。

さらにキッチンは、料理や片付けをしながら家族と会話しやすい対面型を採用。
浴室は、家事をしながらも入浴中の母に目配りができる位置にありますが、脱衣室と洗面室を戸で仕切ることで、プライバシーを保てます。


間取りB・自然の光と風で心地よく暮らせる住まい

間取りBは、障害があっても暮らしやすい工夫をした建坪約24坪の平屋住宅です。
家の中心に、障害がある家族の部屋である和室を配置し、どこにいても意思疎通が図れるようにしています。
また、各部屋を間仕切る引き込み戸は開口部が広く、全開にすれば家全体がワンフロアに。室内を新鮮な空気が通り抜けるように、窓の場所を工夫しました。

浴室は、洗い場が広く介助がしやすい「1220サイズ」のユニットバスを採用しました。
また、可動式の介護器具を備えるトイレは、余裕のある広さになっています。
施主の部屋の隣は、介助用品などを収納する多目的スペースにしました。
夏の強い日差しを遮り、冬は家の奥まで日光を取り入れるため、軒を深くしています。


間取りC・老後を見据えながら、今を楽しむ夫婦の家

間取りCは、60代の共働き夫婦が暮らす建坪約30坪の平屋住宅です。
間取りのポイントは、夫婦それぞれの独立した部屋を設けたこと。
自分時間を満喫できるプライベート空間があることで、夫婦の程よい距離感を保つことができます。
老後の暮らしやすさも意識し、引き戸を多用しました。
趣味も多いため、たくさんの収納スペースを確保できるように工夫しています。

夫婦の寝室には、2人分の洋服を収納するために大きなクローゼットを設けました。
このほかの収納は、家の中心部にまとめ、使い勝手を良くしています。
キッチン横には食材をストックするパントリーを用意したほか、玄関収納はゴルフバッグやタイヤなど大きな物を入れられるように十分な広さを確保しています。

キッチンとリビング・ダイニング、浴室は、日当たりのよい南側に設計しました。
さらに、ここに面するようにテラスを配置し、庭との一体感を感じられるスペースにしました。


伊東 誠三さん

伊東工務店取締役(甲府市)
1級建築士
福祉住環境コーディネーター1級

失敗しないシタク