• 間取り研究室 2022.01.14

空間のつながりを重視した間取り

かつては家の中で家族が一台のテレビをみんなで見て過ごすことも多かったですが、現在は家族の家の中での過ごし方が多様化しています。家の中でそれぞれ自由に過ごしていても家族が一体感を感じられるような工夫を取り入れた間取りの事例を紹介します。


間取りA・家の中心部に吹き抜け

最初に紹介する間取りAは、家の中央部を南北に通してリビング・ダイニングがあり、天井は吹き抜けになっています。
2階部分は東側と西側に分かれていて、それぞれ別の階段で上る構造となっています。

施主の夫婦は家で仕事をすることがあるため、2階の東側の2部屋は仕事で使うことを想定してあります。
2部屋は壁を設けていないため、吹き抜けを通じて1階と空間的につながっていることが大きな特徴です。
一方、2階西側の2部屋は子ども部屋と収納部屋になっていて、いずれも壁が設けられています。
寝室は1階南東の和室で、普段は引き戸を開けてリビング・ダイニングとつながり、就寝時には引き戸を閉めて個室化することができます。

大きめのウッドデッキのほか、仕事の息抜きなどで外の景色を見るために作ったバルコニーも独創的です。


間取りB・日当たりのいい北側リビング

間取りBは土地が東西に細長く、南側に家があるため、単純に南側にリビングを造っても日当たりが悪くなってしまうことを解決するアイデアが詰まっています。
日当たりが悪くなる南側に寝室と倉庫、納戸を配置し、北側にLDKなどを設け、南北の棟をつなぐ位置に玄関があります。
平屋造りで、南棟と北棟の間に中庭があることで南側の家との間に距離ができ、LDKに日が当たるよう計算されています。

施主夫婦は2人暮らし。LDKの南側と玄関前は全面ガラス張りになっていて、日当たりだけでなく開放感もあります。
キッチンや洗面室などの上には子どもの家族が遊びに来た際の寝室として、ロフトを用意しました。
家族が明るいリビングに集って時間を過ごすことができる間取りです。


間取りC・内庭設け室内で植物栽培

間取りCは敷地が平行四辺形であることを活用するため、建物がギザギザと連続している「雁行(がんこう)配置」を採用しました。
間取りを考える上でイメージしたのはカフェです。
仕事をしたり、本を読んだりと、さまざまなことをしている人が同じ空間でつながりを感じられるような工夫がされています。

LDK、内庭、セカンドリビング、寝室など各部屋の間には基本的には扉を設けず、壁も最小限となっているため各部屋間の空間につながりがあります。
2階部分は寝室のみ。そのほかの部屋はスキップフロアを活用するなどして、壁や仕切りを使わず緩やかに部屋を分けています。

特徴的な内庭は、敷地の南側に集合住宅があって視線が多いため、室内にプライバシーの保たれた庭を造るという発想になりました。
内庭部分の壁は半透明の素材を使って日光が入るようにし、床は土間にしました。
半屋外空間とすることで、室内をラフに使うことを可能にしました。


稲山 貴則さん

稲山貴則建築設計事務所山梨オフィス(甲府市)
1級建築士

失敗しないシタク