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ジタクのシタク塾 2022.07.25
住宅に合う木材とは?樹種による違い教えて
木材は古来、神社仏閣をはじめとする多くの建物に使われ、住宅の建築材として普及しています。住宅に用いられる木材の種類、特性の違いについて、建築工房檜家の建築プロデューサー、山田京助さんに聞きました。
木材の持つ吸湿性と通気性
森林大国の日本で、木が建築材として使われてきたのは自然のことだと思います。今でも木造住宅が普及している理由としては、建築費用やデザイン面での自由度、木特有のリラックス効果などさまざまあるでしょう。
中でも注目すべきは木材の持つ天然の調湿効果です。木の吸湿性と通気性が、夏は高温多湿でじめじめと暑く、冬は乾燥する日本の居住環境に適しているといえます。
木造軸組工法(在来工法)の住宅に使われる木材として知られているのはヒノキやスギ、マツ、輸入材のホワイトウッドやスプルース、複数の木材を結合させた集成材などがあります。
適材適所という言葉がありますが、主要木材は種類によって特徴があり、それぞれの役割に合った場所で使われています。
年輪の夏目と冬目
一般的な年輪の見方を知ると、木材についての理解が深まると思います。木の「夏目」と「冬目」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? 木の年輪を数えると、木の年齢が分かるというのはよく知られています。木の断面を見たときに、濃くて細い線を冬目、その間にある薄い部分を夏目と呼び、冬目と夏目が交互に重なって年輪になっています。寒い冬と暑い夏で木の成長スピードが異なることから生じる現象です。
いわば冬目は筋肉、夏目は脂肪です。筋肉が多い方がたくましいように、木の強度は冬目が何本あるかで決定するといわれています。つまり、年輪幅が狭いほど密度が高く、強度面で優れているといえます。
一方で、夏目と冬目がつくる模様が独特の味わいとなり、どこを切り、住宅のどの場所に使うかで空間の雰囲気が変わってきます。
成熟材と未成熟材
木材を見る上での判断基準として、未成熟材と成熟材という言葉も知っておくといいでしょう。丸太の横断面の年輪を見て、中心から15年未満の部分を未成熟材と呼び、その外側の15年以上経ている部分を成熟材といいます。
ヒノキは建材の優等生
住宅建築に使用される主な木材の種類や特性について見ていきます。伝統的な建材としてすぐに思い浮かぶのはヒノキではないでしょうか。ヒノキはヒノキ科ヒノキ属の常緑針葉樹です。日本書紀に「ヒノキは宮殿にせよ」との記録があり、かなり古い時代から宮殿建築用に使用されていたことが分かっています。
材料としてのヒノキは淡紅白色。滑らかな手触りで独特の艶と香りがあります。現在の住宅でも柱・土台・梁(はり)・桁(柱の間にわたす横木)・床・かもい・敷居などあらゆる部分に使用され、建具や家具などにも用いられます。
また、ヒノキには抗かび性や抗菌性、消臭効果などがあり、特有の香り成分には、森林浴に近い癒やし効果やリラックス効果があることが実証されています。
〈ヒノキ〉(木曽ヒノキ以外の産地)
◎長所
強度があり、耐久性に優れています。湿気や腐朽菌、シロアリにも強く、防蟻(ぼうぎ)防腐処理が不要とされています。香りの成分が健康に良いとされています。
◎短所
樹齢30年ほどの木材は、まだ細胞が安定していない未成熟材がほとんどのため、反ったり狂ったりしやすいです。また、無垢(むく)材は自然物のため、物により品質のばらつきがあります。
ヒノキの強度の秘密
樹齢80年以上経つヒノキ材の耐久性は圧倒的に優れ、伐採されてから約200年間は強度が増すことが分かっています。その後、約1000年かけてゆっくりと減っていき、1000年以上たっても伐採時とほぼ同じ強度を保っています。
厳しい環境で育つ木曽ヒノキはトップブランド
ヒノキの産地は九州から四国、本州まで広く分布しています。その中でも北限に位置する長野県の木曽谷に育つ「木曽ヒノキ」は、最高級のヒノキといわれています。厳しい自然環境の下、他の産地のヒノキよりも2~3倍の時間をかけて成長するため、年輪も緻密で美しいのが特長です(写真1)。伊勢神宮(三重県)、法隆寺、東大寺(奈良県)、姫路城(兵庫県)、明治神宮(東京都)など多くの歴史的建造物に使用されています。
〈木曽ヒノキ〉
◎長所
一般的なヒノキの特長に加え、木材にしたときの樹齢が約80年のため、細胞が安定した成熟材に覆われ、無垢材の欠点の反りや狂いが非常に少ないです。他産地より強度があり、日本の木の王様と呼ばれています。
◎短所
国有林で伐採量が決められているために数に限りがあり、他産地のヒノキより価格が高いです。
木目が美しいスギは天井板にうってつけ
スギはヒノキ科スギ亜科スギ属の常緑針葉樹で、北海道以外の地域で広く見られます。風の強い地域でもまっすぐに育ち、木肌が柔らかく、しっとりと濡れたような色艶を持っています。変化に富んだ木目を生かし(写真2)、柱やかもい、天井材などに用いられます。成長速度が比較的早いのも特徴です。
〈スギ〉
◎長所
木目が美しく、古来、内装の化粧材として多く使用されています。特に和室の天井材として使われることが多いです。価格が安く、入手しやすいのもメリットの一つです。
◎短所
流通しているものは細胞が安定していない未成熟材がほとんどのため、反りや狂いが生じやすいです。強度が低く、また湿気や腐朽菌、シロアリに弱い面があるので、土台などの構造材にする場合は防蟻防腐処理が必要となります。
意匠的な美しさが魅力
マツという名前が付く植物は数多くありますが、マツ科マツ属で建材として使われるのはクロマツとアカマツが主流です。
強度的に優れていることから、重構造材に多く使われ、丸太梁は反りなどの特徴を生かした日本独自の使い方です。東大寺や法隆寺(奈良県)、松江城(島根県)、彦根城(滋賀県)といった文化財建築の梁にもマツが使われています。また濃淡のある木目の美しさから、床の間などにも意匠的に用いられます。皮付きのアカマツ丸太は茶室や数寄屋の床柱として人気。落とし掛けや天井の棹縁(さおふち・天井に渡した細木)にも使われます。
〈マツ〉
◎長所
大径に成長し、強度があり粘り強く、密度が高いのが最大の特徴です。スギやヒノキに比べ比重が重く、傷付きにくく、擦り減りにくいです。また経年変化とともに色艶が増してきます。
◎短所
乾燥に伴う狂いや変形が生じやすいです。シロアリにはあまり強くありません。マツクイムシの被害の影響があり産地が減少しています。伐採時期も限られているため、流通量が少なくなっています。
大きな空間をつくることが可能
製材した数種類の木材を接着剤で張り合わせた木質材料を集成材といいます。強度や安定性があり、住宅の柱や梁、土台などに使用されています。
〈集成材〉
◎長所
初期強度が高く、反りや狂い、強度性能のばらつきが少ないです。材料の形状や寸法を自由に設定できるので、大きな空間をつくり出すことができます。価格も安価です。
◎短所
外国産の木材が使われていると、日本の気候風土と合わずに、湿気や腐朽菌、シロアリなどに弱い場合があります。また、接着剤で木を貼り合わせてあることについて、耐久性などに歴史的な裏付けがない点があります。
ジタクのシタク塾講師
山田 京助さん
建築工房 檜家 建築プロデューサー