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ジタクのシタク塾 2022.04.28
家づくりのための資金計画はどう立てる?
「資金の物差し」を作る
「自分の年収だといくらくらいの家が建てられる?」「住宅ローンで、いくら借りればいいの?」「毎月の支払いが不安」―。土地の購入や住宅建築の際に、頭を悩ませるのがお金の問題です。
いざ家を建てようというとき、最も大切なのは自分の「資金の物差し」を作ること。
資金の物差しとは、現在の貯蓄と収入・支出、将来のライフプランを整理し、自身の資金を客観的に判断する指標です。
この物差しを作れば資金面での迷いが消え、自信を持って土地探しや家の建築計画に取り組めると思います。
それでは物差し作りに取りかかりましょう。
① 「いくら借りるか」ではなく、「いくら返せるか」
まず、多くの人の頭に浮かぶのは、「今の自分の年収だったら、いくら貸してもらえるの?」ではないでしょうか。
実は、考えるべきことは「いくら貸してもらえるか」または「いくら借りればいいのか」ではなく、「いくらなら返していけるか」なのです。
なぜ「いくら借りればいいのか」ではないのでしょうか。それは仮に同じ年収であっても、夫婦だけで住むのか、子どもがいるのかといった家族構成の違い、「家を建てたらなるべく節約して生活する」「できたら、年に数回は家族旅行に行きたい」「自動車が趣味なので、定期的に新車に乗り替えたい」といった暮らしぶりの違い、あるいは自己資金の有無などにより、計画の立て方は大きく変わってくるからです。
それでは「いくらなら返せるか」を考えてみましょう。最もシンプルな算出方法は、現在の家賃をベースに、そこにどのくらい加算して返していけるかを計算することです。
例えば、現在月8万円の賃貸住宅に住んでいるとすれば、現状のままなら8万円、2万円プラスできそうなら10万円が月々の返済額になります。
月々の返済額を決め、そこに自己資金を足して返済期間を設定すれば、おおよその借り入れ金額を把握することができます。これにより手に入りそうな土地や建物の規模が自然と決まってきます。
一般的に、1年間の返済額は年収の30%以下に抑えます。審査基準上、30%以上借りることも可能な場合もありますが、借り過ぎにはくれぐれも注意が必要です。
②貯蓄額の推移を予想
土地や建物に応じた借入金額や返済額を想定したマイホーム予算を立て、それを組み込んだ人生をシミュレーションしてみることが重要です。現時点から老後の生活まで見通し、その間に家庭内にどのようなイベントがあるか予想。貯蓄額がどのように推移するかを算出します。
支出は、住宅費(ローン返済額)や食費、学費、通信費、水道光熱費、保険、ガソリン代といった生活費(固定費)がメインになります。さらに、自動車の購入費や維持費、住居購入に伴い発生する固定資産税、火災保険や地震保険なども必要になります。さらに老後の生活費を確保しておくと安心です。
会社員の夫(35歳)、妻(34歳、パート)、長男(4歳)、長女(2歳)の4人家族のA宅をモデルケースとして説明します。グラフの横軸は夫妻の年齢、縦軸のデータはその年の貯蓄残高を表しています。
夫の年収は420万円で、貯蓄額は300万円、そのうちマイホームのための自己資金は200万円とします。夫の年収を基に住宅ローンを利用。融資実行金利は年1.19%(2022年4月現在)で計算し、3450万円を借り入れます。月々の返済額は10万5千円で、35年ローンと仮定しました。現時点では十分返済可能な、無理のない計画に思われます。
ところが、ここに家庭内のイベントを加えると、様子が変わってきます。特に注目すべきは、2人の子どもが次々と大学に入学するタイミング。貯蓄残高がマイナスに転じ、それが数年続くことになります。これを乗り切るには、そもそものマイホーム計画あるいは借入金額を見直す、奨学金制度を利用する、妻の仕事量を増やすなど何らかの手当てが必要になることが分かります。
突然このような事態に陥ると困惑するでしょうが、シミュレーションした段階で気づいていれば、前もって対策を考えることができます。また、モデルケースでは夫のリタイア時に退職金が入ることを想定し、その後の貯蓄額は増えています。しかし、今後の情勢の変化によっては、支払われる金額が減額する可能性があります。
③半年は生活できるお金を手元に残す
住宅購入の際に、「自己資金をどれくらい使うべきか迷う」という人も少なくないでしょう。結論から言うと、仮に収入が途絶えても、家族で最低6カ月間は暮らせる程度のお金を残しておくことが理想です。②で算出した月々の固定費を目安にして、具体的に1カ月の固定費が20万円だったら、約120万円を手元に残すことになります。
社会の変化が著しい現代です。今後も新型コロナ感染症のような病気が流行したり、大きな災害が起こったりするかもしれません。万一、仕事に支障が生じても、家族が何とか暮らせるお金が半年分あれば、慌てずに済むのではないでしょうか。
④査定を甘くしない
土地や建物本体の購入費用とは別に、住宅ローンの事務手数料、土地・建物の登記料、住宅の照明、カーテンなどの諸費用が発生することも覚えておいてください。この諸費用は建物本体の8~10%を目安にします。
A宅の場合、建物が2400万円なので、諸費用を建物本体の8%で計算し(192万円)、充てる額を200万円と設定します。
このうち事務手数料を借入額(3450万円)の2.2%(融資先窓口により異なる)とすると、事務手数料だけでも75万9千円になります。そして、残りの約120万円で他の費用を賄うことになります。
インターネットで検索すると、年収や借入期間などを入力するだけで、借入目安額や返済プランなどを簡単にシミュレーションしてくれるネット査定があります。一つの目安として参考にすると便利です。
ただし、年収を多く見積もってしまったり、記載漏れがあったり、自分自身で行う査定は甘くなりがちな面もあります。不安な場合は、ファイナンシャルプランナーら専門業者に相談してください。
住宅購入は一生に何度もない、非常に高価な買い物です。慎重に計画を進めてほしいと思います。
ジタクのシタク塾講師
家苗 浩明さん
ファイナンシャルプランナー・宅地建物取引士
山梨住まいのFP相談室代表